美容室を経営していると、売上は上がっているのに手元にお金が残らないという悩みを抱えている方は少なくありません。
実は他業種と比較しても利益率はが決して高くない業種なのです。
多くの経営者が改善に苦労していますが、適正な数値を知らなければ改善の方向性も見えてきません。
この記事では美容室の利益率の平均値から、利益率が低くなる原因、そして具体的な改善方法まで詳しく解説していきます。
美容室の利益率の平均は?
美容室の利益率は一般的に10〜20%程度が平均とされています。
これは売上高営業利益率を指しており、例えば月商100万円の美容室であれば、10〜20万円が営業利益として残る計算です。
ただし、この数値は経営形態や店舗規模によって大きく異なります。 個人経営の美容室と複数店舗を展開する美容室では、利益構造が全く異なるためです。
個人経営の美容室の利益率
オーナー1人、もしくはオーナー+スタッフ数名で運営している小規模美容室の場合、利益率は15〜25%程度になることが多いです。 人件費をコントロールしやすく、固定費も比較的低く抑えられるため、効率的な経営ができれば利益率は高くなります。
特にオーナー1人で施術から経営まで全てを行っている場合、人件費という概念がないため、見かけ上の利益率は30%を超えることもあります。 ただし、これはオーナー自身の給与を含んでいない数字なので注意が必要です。
複数店舗展開している美容室の利益率
2店舗以上を展開している美容室の場合、利益率は8〜15%程度に落ち着くことが一般的です。 店舗数が増えると管理コストや本部機能のための人件費が増加するため、個人経営と比較すると利益率は下がります。
ただし、規模の経済が働くことで材料費の仕入れコストを下げられたり、ブランド力による集客効率の向上が期待できます。 複数店舗を持つことで売上の絶対額は大きくなるため、利益率は下がっても利益額としては大きくなる傾向にあります。
他業種と比較した美容室の利益率
美容室の利益率10〜20%という数字は、他業種と比較するとどうでしょうか。 飲食業の平均利益率が5〜10%、小売業が2〜5%程度と言われているため、美容室は比較的利益率の高い業種と言えます。
しかし、コンサルティング業や情報サービス業などの利益率20〜30%と比較すると、決して高いとは言えません。 美容室は技術職でありながら設備投資や人件費がかかるため、純粋なサービス業ほど利益率を高められない構造になっています。
美容室の利益率は業界平均で10〜20%程度ですが、経営形態や規模によって大きく変動します。
次に、なぜ美容室の利益率が低くなってしまうのか、その原因について詳しく見ていきましょう。
美容室の利益率が低くなる主な原因
美容室の利益率が低くなる原因は、人件費率の高さ、材料費のコントロール不足、そして客単価と回転率のバランスの悪さです。
これらの要因が複合的に絡み合うことで、売上は上がっているのに利益が残らないという状況が生まれます。
人件費率が高すぎる(50%以上)
美容室経営において最も大きな支出項目が人件費です。 理想的な人件費率は40〜50%と言われていますが、実際には60%を超えている美容室も少なくありません。
人件費率が高くなる主な原因は、スタッフの生産性が低いことにあります。 1人のスタッフが1日に担当できる客数や客単価が低いと、必然的に人件費率は上がります。
また、スタッフの技術レベルにばらつきがあると、高単価メニューを提供できるスタッフとそうでないスタッフが混在することになります。 これも全体の人件費率を押し上げる要因となります。
さらに、スタッフの定着率が低く、常に求人にコストをかけている美容室も人件費率が高くなりがちです。 新人教育にかかる時間とコストは、すぐには回収できないため、離職率の高さは経営を圧迫します。
材料費・商材費のコントロール不足
美容室の材料費率の理想は5〜10%程度ですが、コントロールができていないと15%を超えることもあります。 カラー剤やパーマ液などの消耗品は、適切な在庫管理と使用量の管理が必要です。
特に問題となるのが、スタッフによる材料の無駄遣いです。 カラー剤を多めに調合してしまう、シャンプーやトリートメントを必要以上に使うといった行動が積み重なると、材料費は大きく膨らみます。
また、売れないヘアケア商品の在庫を抱えてしまうことも、利益率を下げる原因となります。 流行に乗って大量に仕入れた商品が売れ残ると、それは直接的な損失となります。
定期的な棚卸しと在庫管理を行っていない美容室は、どれだけの材料が無駄になっているかすら把握できていない状態です。
客単価と回転率のバランスが悪い
利益を最大化するには、客単価と回転率のバランスが重要です。 客単価が低すぎると多くの顧客を回さなければ売上が立たず、回転率が低すぎると売上の絶対額が上がりません。
例えば、カット4,000円という低単価メニューで勝負しようとすると、1日に何人もの顧客を施術しなければなりません。 これは身体的にも精神的にも負担が大きく、持続可能な経営とは言えません。
逆に、高単価メニューを中心に据えても、予約が埋まらなければ意味がありません。 1人あたり2時間かかる15,000円のメニューと、1人あたり1時間の8,000円メニューでは、どちらが利益率が高いかは一概に言えません。
時間あたりの売上、つまり生産性を考えることが重要です。 客単価だけでなく、施術時間も含めて最適なメニュー構成を考える必要があります。
美容室の利益率が低くなる原因は、人件費率の高さ、材料費のコントロール不足、客単価と回転率のバランスの悪さにあります。
これらの問題を解決するには、まず美容室の売上構造と原価の内訳を正しく理解することが必要です。
美容室の売上構造と原価の内訳を理解する
利益率を改善するには、美容室の売上構造と支出の内訳を正確に把握することが出発点となります。
何にどれだけのコストがかかっているのかを数値で理解することで、改善すべきポイントが明確になります。
美容室の主な収入源
美容室の収入源は大きく分けて3つあります。
まず最も大きいのが技術売上です。 カット、カラー、パーマ、トリートメントなどの施術による収入で、美容室の売上の70〜85%を占めます。
次に物販売上があります。 シャンプー、トリートメント、ワックスなどのヘアケア商品の販売で、売上の5〜15%程度です。 物販は利益率が高いため、積極的に取り組むことで全体の利益率を引き上げることができます。
そして、一部の美容室ではヘッドスパやエステなどの付加サービスによる収入もあります。 これらは技術売上とは別に計上され、売上の5〜10%程度を占めることがあります。
技術売上に依存しすぎると、スタッフの労働時間に比例した売上しか立てられません。 物販や付加サービスで収益の柱を増やすことが、利益率向上のカギとなります。
美容室の主な支出項目と理想的な比率
美容室の支出項目は以下のように分類できます。
人件費:40〜50% 材料費:5〜10% 家賃:8〜15% 水道光熱費:3〜5% 広告宣伝費:3〜8% その他経費(保険、通信費、消耗品など):5〜10%
これらを合計すると、支出は売上の70〜90%程度となり、残りの10〜30%が利益となります。 ただし、この数字はあくまで目安であり、立地や経営方針によって変動します。
特に家賃は立地によって大きく異なります。 駅前の一等地であれば家賃率は15%を超えることもありますが、集客力が高ければ売上でカバーできます。 逆に、郊外の住宅地であれば家賃率は8%程度に抑えられることもあります。
広告宣伝費も重要な項目です。 新規顧客の獲得には広告費がかかりますが、リピート率が高ければ広告費を抑えることができます。 新規顧客獲得コストとリピート顧客の維持コストを比較すると、リピート顧客の方が圧倒的にコストが低いのです。
美容室の売上構造を理解し、各支出項目の理想的な比率を把握することで、どこに改善の余地があるかが見えてきます。
それでは、具体的にどのような方法で利益率を改善していけば良いのか、実践的な方法を見ていきましょう。
美容室の利益率を改善する具体的な5つの方法
利益率を改善するには、売上を増やすか、コストを削減するかのどちらかです。
ここでは、実際に多くの美容室が成果を上げている具体的な方法を5つ紹介します。
技術以外の収益源を確保する
物販売上を強化することは、最も即効性のある利益率改善策です。 物販の粗利率は40〜60%と非常に高く、技術売上の粗利率よりもはるかに高いためです。
例えば、月商100万円の美容室が物販売上を5万円増やせば、その利益への貢献度は2〜3万円にもなります。 これは売上の2〜3%に相当し、利益率を直接的に押し上げます。
物販を増やすコツは、無理に売り込むのではなく、顧客の悩みに合わせた提案をすることです。 「このトリートメントを使えば、今日のサラサラ感が家でも続きますよ」といった、具体的なメリットを伝えることが重要です。
また、サロン専売品だけでなく、オリジナルブランドの商品を開発することも選択肢の一つです。 利益率がさらに高くなり、ブランディングにもつながります。
材料費の見直しと適正な在庫管理
材料費を5%削減できれば、それは直接利益に反映されます。 月商100万円の美容室で材料費率が10%であれば、材料費は10万円です。 これを5%削減すれば、5,000円の利益改善となり、年間で6万円もの差になります。
材料費削減の第一歩は、現状の使用量を正確に把握することです。 どのメニューにどれだけの材料を使っているのか、スタッフごとに使用量に差はないかをチェックします。
カラー剤の調合量を標準化したり、シャンプーやトリートメントの適正使用量をマニュアル化することで、無駄を削減できます。 また、仕入れ先の見直しも重要です。 複数の業者から相見積もりを取り、より良い条件で仕入れられないか検討しましょう。
在庫管理では、月に1度は棚卸しを行い、デッドストックを作らないことが大切です。 特に流行のヘアケア商品は、売れ残りリスクが高いため、小ロットで仕入れるようにしましょう。
スタッフの生産性を高める仕組み作り
人件費率を下げるには、スタッフ1人あたりの売上を増やすことが必要です。 これは単に労働時間を増やすのではなく、限られた時間でより多くの価値を生み出すということです。
具体的には、技術力の向上によって施術時間を短縮したり、高単価メニューを提供できるようにすることです。 カットに1時間かかっていたスタッフが45分で同じクオリティを提供できれば、1日に担当できる客数が増えます。
また、アシスタントとスタイリストの役割分担を明確にすることも重要です。 シャンプーやブローなどはアシスタントに任せ、スタイリストは技術に集中できる環境を作ります。
スタッフのモチベーション管理も生産性に直結します。 売上に応じたインセンティブ制度を導入することで、スタッフ自身が売上を意識するようになります。 ただし、過度な競争は職場の雰囲気を悪くするため、チーム全体での目標達成を評価する仕組みも併用すると良いでしょう。
客単価を無理なく上げる施策
客単価を上げる最も効果的な方法は、セットメニューや追加メニューの提案です。 カットだけで来店した顧客に、「前髪パーマをプラスすると、スタイリングが楽になりますよ」といった提案をします。
メニュー表の見せ方も重要です。 単品メニューだけでなく、セットメニューを用意することで、顧客は自然と高単価のメニューを選びやすくなります。 例えば、「カット+カラー+トリートメント」のセットを作り、単品の合計よりも少し安く設定することで、お得感を演出できます。
また、段階的な価格設定も有効です。 カットを4,000円、5,000円、6,000円の3段階に設定し、それぞれサービス内容に差をつけます。 多くの顧客は中間の価格を選ぶ傾向があるため、自然と客単価が上がります。
ただし、無理な値上げは顧客離れを引き起こします。 価格を上げる際は、それに見合った価値の提供が必要です。 技術力の向上、接客の質の向上、店内環境の改善など、顧客が「この価格でも来たい」と思える理由を作りましょう。
リピート率向上で集客コストを削減
新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかると言われています。 リピート率を10%向上させることができれば、広告費を大幅に削減できます。
リピート率向上の基本は、顧客満足度を高めることです。 技術力はもちろん、接客態度、店内の清潔さ、待ち時間への配慮など、あらゆる面で顧客の期待を超える必要があります。
具体的な施策としては、次回予約の促進が効果的です。 施術後、帰り際に「次回はいつ頃がおすすめですよ」と声をかけ、その場で予約を取ってもらいます。 予約を取った顧客の来店率は、予約を取らなかった顧客よりも圧倒的に高くなります。
また、LINEやメールでのフォローアップも重要です。 前回の来店から1ヶ月半が経過した頃に、「そろそろカラーの色落ちが気になる時期ではないですか?」といったメッセージを送ります。 ただし、頻繁すぎるメッセージは逆効果なので、月に1回程度に留めましょう。
ポイントカードやメンバーシップ制度も、リピート率向上に貢献します。 「5回来店で1回無料」といった特典を用意することで、顧客に継続来店の動機を与えられます。
美容室の利益率を改善するには、物販強化、材料費削減、スタッフの生産性向上、客単価アップ、リピート率向上の5つの方法が効果的です。
最後に、実際に高い利益率を維持している美容室が実践している経営戦略を見ていきましょう。
利益率の高い美容室が実践している経営戦略
利益率20%以上を安定的に維持している美容室には、明確なコンセプト、徹底した数値管理、そして継続的な改善の仕組みという共通点があります。
まず、コンセプトの明確化です。 「誰に、何を、どのように提供するのか」が明確な美容室は、価格競争に巻き込まれにくく、高単価でも顧客が集まります。 例えば、「30代働く女性のための時短美容室」「髪質改善に特化したサロン」といった具体的なコンセプトがあると、ターゲット顧客に刺さりやすくなります。
次に、数値管理の徹底です。 毎月の売上、利益率、客単価、リピート率、スタッフ別売上など、あらゆる数値を記録し、分析しています。 数値を見ることで、感覚ではなく事実に基づいた経営判断ができます。
私自身、10年以上web制作会社を運営していますが、数値管理の重要性は業種を問わず同じだと感じています。 美容室経営においても、毎日の売上を記録するだけでなく、それを分析して次の施策に活かすことが重要です。
また、スタッフ教育への投資も惜しみません。 技術セミナーへの参加費用や、接客トレーニングのコストは、短期的には支出ですが、長期的にはスタッフの生産性向上と顧客満足度の向上につながります。 質の高いサービスを提供できれば、価格を上げても顧客は離れません。
さらに、業務の標準化とマニュアル化も進めています。 施術の手順、材料の使用量、接客のフローなど、できる限り標準化することで、品質のばらつきを抑え、無駄を削減できます。 標準化は効率化だけでなく、新人教育の時間短縮にも貢献します。
最後に、定期的な見直しの習慣です。 3ヶ月に1度、メニュー構成や価格設定を見直し、市場の変化に対応しています。 同じメニュー、同じ価格で何年も続けることは、徐々に競争力を失うことを意味します。
顧客のニーズは常に変化しています。 今求められているのは、時短なのか、髪質改善なのか、リラックスできる空間なのか。 市場の声に耳を傾け、柔軟に対応できる美容室が、高い利益率を維持しているのです。
美容室の利益率は、適切な経営戦略を実践することで確実に改善できます。 まずは現状の数値を正確に把握し、今回紹介した方法の中から実践できるものから始めてみてください。 小さな改善の積み重ねが、やがて大きな利益の違いとなって現れるはずです。


