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歯科医院の倒産は増加傾向?廃業の理由と経営を安定させる方法について

地域ビジネス

歯科医院は医師免許を持つ専門職として安定しているイメージがあるものの、実際には経営難に陥るケースが増えています。

実際には全国に約7万件もあり、コンビニエンスストアの数を上回ると言われるほど過当競争の状態です。

優れた技術を持っていても、患者を獲得できなければ経営は成り立ちません。

廃業する理由や経営を圧迫する要因を知ることで、リスクを回避した経営が可能になります。

この記事では歯科医院の倒産件数の推移から倒産する主な理由、リスクが高い医院の特徴、そして経営を安定させる具体的な方法まで詳しく解説します。

歯科医院の倒産件数は?

歯科医院の倒産件数は年間20〜30件程度で推移しており、廃業や閉院を含めると実際の経営難に陥っている医院はさらに多いと推定されます。

東京商工リサーチのデータによると、法的整理や私的整理により倒産した歯科医院の件数は、毎年20〜30件程度です。 ただし、これは正式に倒産手続きを取ったケースのみであり、静かに閉院したり、事業を縮小したりしている医院を含めると、実態はもっと深刻です。

近年の倒産件数の推移

2010年代以降、歯科医院の倒産件数は年間20〜40件の範囲で推移しています。

2019年には37件の倒産があり、近年では比較的多い年でした。 コロナ禍の2020年は、政府の支援策もあって24件まで減少しましたが、2021年以降は再び増加傾向にあります。

倒産の形態としては、破産が最も多く、次いで民事再生、特別清算となっています。 負債総額は、1億円未満の小規模な医院から、数億円規模の大型医院まで様々です。

ただし、統計に表れる倒産件数は氷山の一角に過ぎません。 後継者不足による廃院、高齢の院長が引退して閉院、経営難で自主的に閉院など、様々な理由で毎年多くの歯科医院が姿を消しています。

倒産以外の廃業も含めた実態

倒産という形を取らなくても、経営難により閉院する歯科医院は多数存在します。

厚生労働省の医療施設調査によると、毎年約2,000件の歯科医院が廃止届を提出しています。 一方で、新規開業も約2,000件あるため、総数はほぼ横ばいですが、入れ替わりは激しい状況です。

廃止の理由は、院長の高齢化や死亡、後継者不在、経営不振など様々です。 形式上は「院長の引退」となっていても、実態は経営難だったというケースも少なくありません。

また、複数の歯科医院を経営していた医療法人が、不採算店舗を閉鎖するケースも増えています。 拡大路線で複数店舗を展開したものの、収益が上がらず、整理せざるを得なくなるのです。

他の医療機関と比較した倒産率

歯科医院の倒産率は、他の医療機関と比較するとどうでしょうか。

病院の倒産件数は年間数件程度と非常に少ないです。 病院は規模が大きく、地域医療の中核を担うため、行政の支援も受けやすく、倒産しにくい構造になっています。

一般診療所(内科や整形外科など)の倒産も、年間10件未満と少ない水準です。 歯科医院は、これらと比較して倒産件数が多い傾向にあります。

歯科医院の倒産率が高い理由は、過当競争です。 全国に約7万件もの歯科医院があり、患者の奪い合いが激しくなっています。 一方、病院や一般診療所は、地域ごとに一定の需要があり、競合が少ない場合が多いです。

歯科医院の倒産件数は年間20〜30件程度で推移しており、廃業や閉院を含めると経営難に陥っている医院はさらに多いです。

では、具体的にどのような理由で倒産してしまうのでしょうか。

歯科医院が倒産する5つの主な理由

歯科医院が倒産に至る背景には、過当競争、開業時の借入負担、保険診療依存、後継者不足、経営知識不足という5つの共通した理由があります。

これらの問題が複合的に絡み合うことで、経営が立ち行かなくなり、倒産を余儀なくされます。

過当競争による患者数の減少

最も大きな理由が、歯科医院の過剰供給による過当競争です。

全国の歯科医院数は約7万件で、コンビニエンスストア(約5.5万店)よりも多いと言われています。 人口減少が進む中、歯科医院の数は増え続けており、一医院あたりの患者数は減少傾向にあります。

特に都市部では、半径500m以内に10件以上の歯科医院があることも珍しくありません。 患者の奪い合いが激しく、新規患者の獲得が困難になっています。

また、予防歯科の普及により、虫歯の患者数自体が減少しています。 フッ素入り歯磨き粉の普及、学校での歯科検診の充実などにより、子供の虫歯は大幅に減りました。 虫歯治療という従来の主要な収入源が減少しているのです。

競争が激しい中、差別化できない医院は患者を獲得できず、経営が悪化していきます。

開業時の借入金返済の負担

歯科医院の開業には、多額の初期投資が必要です。

設備投資、内装工事、医療機器の購入などで、開業資金は5,000万円から1億円以上かかることも珍しくありません。 特に、CT、デジタルレントゲン、治療ユニットなど、高額な医療機器が必要です。

この資金を借入で賄った場合、毎月の返済額が経営を圧迫します。 例えば、5,000万円を20年で返済する場合、金利を含めて毎月25〜30万円程度の返済が必要です。

開業直後は患者数が少なく、売上も安定しません。 それにも関わらず、借入金の返済は待ってくれません。 資金繰りに苦しみ、数年で行き詰まるケースも少なくありません。

また、開業時に最新の高額機器を導入しすぎて、過剰投資になることもあります。 身の丈に合わない投資は、後々の経営を苦しめます。

保険診療依存による収益性の低さ

歯科診療の大半は保険診療であり、収益性が低いことも倒産の一因です。

保険診療の診療報酬は国が定めており、自由に価格設定できません。 また、診療報酬は年々引き下げられる傾向にあり、同じ治療をしても収入は減少しています。

保険診療だけに依存していると、患者数を増やすしか収入を増やす方法がありません。 しかし、1日に診察できる患者数には限界があり、院長の労働時間にも限りがあります。

一方、自費診療(インプラント、審美歯科、矯正など)は高単価ですが、患者を獲得するのが難しいです。 保険診療で来院した患者に、自費診療を提案しても、価格が高いため敬遠されることが多いです。

保険診療依存の経営体質では、薄利多売となり、利益率が低くなります。

後継者不足と高齢化

院長の高齢化と後継者不足も、廃業や倒産の大きな要因です。

現在、歯科医師の平均年齢は50歳を超えており、高齢化が進んでいます。 60代、70代で現役を続ける院長も多いですが、体力的な限界から診療時間や診療日数を減らさざるを得ません。

後継者がいれば事業を継承できますが、子供が歯科医師にならなかったり、他で開業してしまったりして、後継者がいないケースが増えています。 また、承継を希望する若手歯科医師がいても、条件が合わずに成立しないこともあります。

後継者がいない場合、閉院するしかありません。 患者がいても、設備があっても、院長がいなければ診療はできないのです。

経営知識の不足

歯科医師は医療の専門家ですが、経営の専門家ではありません。

多くの歯科医師は、経営やマーケティング、会計について学ぶ機会がないまま開業します。 優れた技術を持っていても、経営が分からなければ、事業を継続できません。

売上と経費の管理、キャッシュフローの把握、損益分岐点の計算など、やるべきことは多岐にわたります。 これらを理解せずに、どんぶり勘定で経営していると、気づいたときには資金が尽きています。

また、スタッフの採用・教育、労務管理なども重要な経営課題です。 スタッフとのトラブルや、定着率の低さに悩む医院も多いです。

経営者としての自覚がないまま開業すると、後悔することになります。

歯科医院が倒産する主な理由は、過当競争による患者減少、開業時の借入負担、保険診療依存、後継者不足、経営知識不足です。

それでは、どのような歯科医院が倒産リスクが高いのか、その特徴を見ていきましょう。

倒産リスクが高い歯科医院の特徴

倒産する歯科医院には、患者数の慢性的な少なさ、自費診療比率の低さ、固定費の高さ、立地条件の悪さという共通した特徴があります。

これらの要素が複数当てはまる場合、倒産リスクは非常に高いと言えます。

患者数が慢性的に少ない

最も危険な兆候が、患者数が慢性的に少ないことです。

1日の来院患者数が10人以下という状態が続くと、経営は非常に厳しくなります。 保険診療の単価は5,000円程度が平均とすると、10人で5万円、月20日営業で月商100万円です。 ここから家賃、人件費、材料費などを差し引くと、利益はほとんど残りません。

患者数が少ない原因は、立地、技術力、接客態度、設備の古さなど様々です。 いずれにしても、患者数が増えない限り、経営改善は望めません。

また、新規患者がほとんど来ないという状態も危険です。 既存患者だけに依存していると、徐々に患者は減っていきます。 治療が終われば来なくなる、引っ越しや死亡で来られなくなる、といった自然減少は避けられません。

自費診療の比率が低い

保険診療のみに依存し、自費診療がほとんどない医院も倒産リスクが高いです。

自費診療は、インプラント、セラミック、ホワイトニング、矯正などが該当します。 これらは単価が高く、1件で数十万円から数百万円の売上になります。

自費診療の比率が10%以上ある医院は、経営が安定しやすいです。 一方、自費診療がほとんどない医院は、薄利多売の経営となり、利益率が低くなります。

自費診療を提案するスキルがない、設備が整っていない、患者の信頼を得られていないといった理由で、自費診療ができない医院は、収益性が低くなります。

固定費が高すぎる

家賃や人件費などの固定費が高すぎると、売上が少ないときに資金繰りが苦しくなります。

駅前の好立地に開業し、家賃が月100万円以上かかっている医院もあります。 集客力があれば良いですが、患者数が少ないと、家賃が経営を圧迫します。

また、必要以上にスタッフを雇用している医院も問題です。 歯科衛生士、歯科助手、受付など、複数名のスタッフを雇うと、人件費が膨らみます。 患者数に見合ったスタッフ数にしないと、利益が出ません。

高額な医療機器のリース料も固定費です。 必要性を十分に検討せずに最新機器を導入すると、毎月のリース料が負担になります。

立地条件が悪い

立地条件が悪いと、新規患者の獲得が非常に困難です。

駅から遠い、大通りから外れた裏路地、2階以上のテナントなど、認知されにくい場所に開業すると、通りすがりの患者は期待できません。 看板を出しても気づいてもらえず、存在を知られないままになります。

また、近隣に競合が多すぎる場所も避けるべきです。 半径500m以内に10件以上の歯科医院があるような場所では、患者の奪い合いになります。

住宅街の中にある医院も、駐車場がないと厳しいです。 車社会の地方では、駐車場がなければ患者は来ません。

立地は開業後に変えられないため、最初の選択が非常に重要です。

倒産リスクが高い歯科医院の特徴は、患者数の慢性的な少なさ、自費診療比率の低さ、固定費の高さ、立地条件の悪さです。

それでは、これらのリスクを回避し、経営を安定させるためにはどうすれば良いのでしょうか。

歯科医院の経営を安定させる5つの方法

倒産を避け、安定した経営を実現するには、自費診療比率の向上、予防歯科への注力、リコール率の向上、ウェブ集客の強化、経営数値の把握という5つの方法が有効です。

これらを実践することで、収益性を高め、長期的に持続可能な経営が可能になります。

自費診療の比率を高める

経営を安定させる最も効果的な方法が、自費診療の比率を高めることです。

インプラント、セラミック、ホワイトニング、矯正など、自費診療のメニューを充実させます。 これらは単価が高く、1件で数十万円の売上になるため、少ない患者数でも収益を確保できます。

自費診療を増やすには、患者への提案力が重要です。 保険診療の範囲でできる治療と、自費診療で可能になる治療の違いを分かりやすく説明します。 「こちらの方が見た目がきれいです」「長持ちします」といったメリットを伝えることで、自費診療を選んでもらえます。

また、カウンセリングルームを設けて、じっくり相談できる環境を作ることも効果的です。 診療台の上で説明するだけでなく、落ち着いた空間で治療計画を提案することで、高額な自費診療も受け入れてもらいやすくなります。

自費診療の技術を磨くことも大切です。 セミナーに参加したり、専門医の資格を取得したりして、自信を持って提供できる体制を整えます。

予防歯科に力を入れる

予防歯科は、患者の定期的な来院を促し、安定した収益源となります。

虫歯や歯周病の治療だけでなく、予防のためのクリーニングやメンテナンスに力を入れます。 3ヶ月に1度、定期検診とクリーニングで来院してもらえれば、安定した患者数を確保できます。

予防歯科は、保険診療でも行えますが、自費の予防プログラムを提供することも可能です。 PMTC(専門的機械的歯面清掃)など、保険外の予防メニューを用意することで、単価も上げられます。

予防歯科の重要性を患者に伝えることも大切です。 「痛くなってから来るのではなく、痛くならないために来る」という意識を持ってもらえれば、継続的な来院につながります。

リコール率を向上させる

リコール率(再来院率)を高めることで、安定した患者数を維持できます。

治療が終わった患者に、次回の検診日を提案し、予約を取ってもらいます。 「3ヶ月後にまた診せてください」と具体的に伝えることで、予約率が上がります。

また、予約日が近づいたら、ハガキやメール、LINEでリマインドを送ります。 「次回の検診日が近づいています」という連絡を受けることで、来院を忘れずに済みます。

定期検診のメリットを伝えることも重要です。 「早期発見で治療費も時間も少なく済みます」「歯を長持ちさせることができます」といった説明をすることで、納得してもらえます。

リコール率が80%以上あれば、経営は非常に安定します。 逆に、リコール率が50%以下だと、常に新規患者を獲得し続けなければならず、経営が不安定になります。

ウェブ集客を強化する

現代の歯科医院経営では、ウェブ集客は欠かせません。

まず、ホームページの充実が重要です。 診療内容、設備、院長やスタッフの紹介、アクセスなどの基本情報に加えて、診療方針や特徴を分かりやすく伝えます。 患者の声や症例写真(同意を得て)を掲載することで、信頼感を高められます。

SEO対策も重要です。 「地域名+歯科」で検索したときに上位表示されるよう、コンテンツを充実させます。 ブログで歯の健康に関する情報を発信することで、検索エンジンからの流入を増やせます。

Googleマイビジネスへの登録も必須です。 地図検索で表示されるため、近隣の患者を獲得しやすくなります。 口コミを集めることで、検索順位も上がり、新規患者の獲得につながります。

オンライン予約システムを導入することも効果的です。 24時間いつでも予約できる環境を整えることで、患者の利便性が向上し、予約率が上がります。

経営数値を把握し改善する

経営を安定させるには、数値を正確に把握し、定期的に分析することが重要です。

毎月の売上、患者数、新規患者数、リコール率、自費診療比率などを記録します。 これらの数値を見ることで、経営の問題点が明確になります。

例えば、新規患者数が減少しているなら、広告宣伝の強化が必要です。 リコール率が低いなら、リマインドの仕組みを改善する必要があります。 自費診療比率が低いなら、提案力を強化する必要があります。

また、損益分岐点を把握することも重要です。 「月にどれだけの売上があれば黒字になるか」を理解していれば、目標が明確になります。

私自身、10年以上ビジネスを運営していますが、数値管理の重要性を痛感しています。 数値を見ることで、感覚ではなく事実に基づいた経営判断ができます。

歯科医院の経営を安定させるには、自費診療比率の向上、予防歯科への注力、リコール率の向上、ウェブ集客の強化、経営数値の把握が重要です。

最後に、歯科医院市場の現状と今後の見通しについて触れておきましょう。

歯科医院市場の現状と今後の見通し

歯科医院市場は今後も競争が激しく、差別化できない医院は淘汰されていく見通しです。

歯科医院の数は約7万件で、人口減少が進む中、供給過剰の状態が続いています。 特に都市部では飽和状態に近く、新規開業してもすぐに患者を獲得するのは困難です。

また、虫歯患者の減少も続いています。 予防意識の高まりやフッ素の普及により、子供の虫歯は大幅に減少しました。 従来の虫歯治療を中心とした経営モデルは、成り立ちにくくなっています。

一方で、高齢化社会の進展により、入れ歯やインプラントなど、高齢者向けの需要は増加しています。 訪問歯科診療のニーズも高まっており、在宅医療に力を入れる医院も増えています。

審美歯科や矯正など、美容や健康意識の高まりに応える自費診療の需要も伸びています。 ホワイトニングやマウスピース矯正など、従来の歯科治療とは異なるニーズに対応できる医院は、成長の可能性があります。

今後の歯科医院経営で重要なのは、差別化です。 単なる虫歯治療だけでなく、専門性の高い治療、予防歯科、審美歯科、訪問診療など、独自の強みを持つことが必要です。

また、経営力とマーケティング力も不可欠です。 優れた技術を持っていても、それを患者に伝え、選んでもらう力がなければ、生き残れません。

変化に対応できる歯科医院だけが、長期的に繁栄していけるでしょう。

歯科医院の倒産件数は年間20〜30件程度で推移しており、過当競争、借入負担、保険診療依存、後継者不足、経営知識不足が主な倒産理由です。 経営を安定させるには、自費診療比率の向上、予防歯科への注力、リコール率の向上、ウェブ集客の強化、経営数値の把握が重要となります。 厳しい競争環境ではありますが、適切な戦略を持って取り組めば、歯科医院として長く成功することは十分に可能です。